キューバ③ 二つの通貨 Dual currency


キューバに入国してまず戸惑うのは、この国には二つの通貨が存在するということです。ひとつは、キューバ人が給料としてもらう人民ペソ(現地ではペソ・クバーノと呼び、MN(モネ・ナシオナル)と表記されることが多い。以下ペソ)、もうひとつは、外貨を兌換した時にもらう兌換ペソ(ペソ・コンパラチブルやクックと呼ばれ、CUCと表記される。以下CUC)があります。(写真左が人民ペソ、写真右が兌換ペソ)。
この兌換ペソは、1CUC=1.08米ドルに固定されています。
また人民ペソは、1CUC=24人民ペソに固定されています。
つまり、キューバで1ペソと言われた場合、それが人民ペソか兌換ペソかで24倍の違いがあるということです。

まず、二つのレストランのメニューを御覧ください。



二つとも、$20といった表記が見られます。
しかし、前者は人民ペソなのに対し、後者は兌換ペソの価格です。すなわち、レストランでも店によって24倍の差があるということです。例えば、あるレストランでは料理がが500円なのに対し、あるレストランでは料理が12000円といった感じです。まあ、日本でも、街食堂と高級ホテルのディナーコースであれば、このような価格差は生じ得ますが、キューバの場合、兌換ペソの店といっても、そう豪華な店ではありませんし、実際に出てくる料理の質も、そう大差はありません。



上のメニューの、人民ペソのレストラン。ただし、ここは例外的にきれいなほうです。20人民ペソ≒75円。


上のメニューの、兌換ペソのレストラン。外国人観光客向けです。(高かったので、食事はしていません。ちなみに20CUC≒1800円)。下は、別の兌換ペソのレストラン。



ロブスターのグリル。トリニダーの名物です。8CUC≒720円。

その他、人民ペソのレストラン



角煮のようなものと、ライス。12人民ペソ≒45円



豚肉のソテーと、ライス。30人民ペソ≒112円。

味は兌換ペソのお店のほうが流石にいいです。しかし、人民ペソ払いの店も悪いわけではありません。価格差を考えれば、みな人民ペソのお店に行くのではないか、むしろ、兌換ペソのお店に誰が行くのかと思われそうです。


ここで思い出すべきは、キューバが社会主義の国であるということです。社会主義国家は、私有財産制を否定し、社会共同体で勤労による収益を折半するという考え方です。キューバ人はこの社会システムの中で、賃金を資本主義国の水準からして極めて低い額に抑えられている代わりに、配給等生活物資を安価に手にすることができるのです。
これに対し、資本主義国からの観光客は、キューバの社会に労働力を提供していません。にもかかわらず、キューバ人と同じ通貨制度に入り込めば、フリーライダーとなり、制度自体のバランスを崩壊させることになります。
そこで、外国人がキューバでお金を使う場合、両替により手にするお金を兌換ペソとし、兌換ペソベースの経済システムを別に作ることで、社会主義の経済システムと、資本主義国からの観光客を呼び込むことによる観光産業を両立させているのです。

もっとも、外国人が人民ペソを持つことも、キューバ人が兌換ペソを持つことも禁止されていません。両替所に行けば、誰でも1CUCを24ペソに交換することができます。
それでは、観光客も全て人民ペソを使ってしまうのではないかと思われそうです。しかし、観光客にとって出費の大半を占める宿代と交通費は、基本全てCUCで価格設定がされており、観光客が立ち寄るようなレストランや商店もほぼCUCで価格設定されていますので、この制度は機能しているといえます。


兌換ペソ払いのお店。比較的きれい。しかし、物は少ない。


人民ペソのお店。カウンター式のお店が多いです。こちらも物は多くない。

ちなみに、私が泊まる、カサというキューバの民宿でも、一泊15CUC≒1400円し、空港からハバナ市内のタクシーが25CUC≒2400円、ハバナからトリニダーのバス(約300km6時間)が25CUCします。缶ジュースが1CUC≒97円、その他生活物資も、CUCベースでは先進国レベルの物価ということになります。
人民ペソベースでは、市バスが0.2ペソ≒0.8円、コーヒー一杯1ペソ≒4円、ジュース一杯2ペソ≒8円、トリニダのレストラン1食12ペソ≒48円、ハバナ繁華街のチャーハン20ペソ≒80円、ハバナのレストラン1食30ペソ≒120円と、かなり低くなります。

では、キューバの民宿やホテルはぼろ儲けをしているのかと言えば、そうではないようです。これらの宿は、外国人を泊めるライセンス料として、相当高額のお金を政府に支払っているようです。また、ライセンスのない宿に外国人が泊まることは厳しく制限されています。


ハバナの民宿(カサと呼ばれます)。宿のおばちゃんが食事を用意して暖かく迎えてくれます。とても居心地がいいです。

このように、社会主義システムの維持と、観光業による外貨獲得という、相反しそうな二つのバランスを、二つの通貨制度を併用することで、実現させています。
もっとも、観光客にとっては非常にわかりにくく、レストランに入るときも、そのお店がCUC払いかペソ払いか気をつけなければなりません。更に、2種類の通貨が混在するため、CUCで支払ったのに、お釣りをペソで返されるという詐欺も生じているそうなので、一々確認が必要です。また、コインも2種類に分かれるわけですから、二つ財布を用意しておいたほうがいいでしょう。


オビスポ通りの両替所には大行列。

なお、キューバがいくらアメリカと敵対しているといっても、通貨は米ドルベースです。以前は米ドルがそのまま流通していましたが、米ドル現金の流通を禁止し、CUCが発行されるようになりました。米ドル現金の流通を防ぐためでしょう、米ドル現金からCUCに両替する時は、レートとは別に10%の手数料がかかります。これは米ドルのみなので、キューバに行く際は、他の通貨の現金を容易するのが得策です。ちなみに、日本円の現金も両替できます。
ちなみに、1月20日(日曜日)のハバナ・オビスポ通りの両替所のレートで言えば、カナダドル0.9621/1.0268=0.9370 英ポンド1.5381/1.6415=0.9370 メキシコペソ12.2350/13.0593=0.9369 スイスフラン0.9017/0.9625=0.9368 ユーロ1.2873/1.3738=0.9370 日本円86.8989/92.7392=0.9370(小数点第五位四捨五入)ですから、意外にも米ドル以外の通貨のレートの手数料の割合はほぼ同じであることがわかります。ですので、日本円から直接両替するのが得策ということになります。
ちなみに、私はそれと知らず、わざわざユーロを用意していきました。本来円からユーロに替える手数料分損なわけですが、この最近の円安のせいで、114円で替えたユーロが120円になっているので、偶然に得はしました。

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